毎年恒例
例年この季節には長野方面へ新緑と鹿の肉を求めてドライブに出かけるのだが、昨年は母が岡山の叔父さんの所で寝込んでしまい、結局この季節に出かけられなかった。今年こそはと計画。もともと去年立てた計画、後はお天気がよければ良い。
結局予定が空いたのは4/26〜4/27。お天気は少々気掛りだが、どうせ車には屋根がついているさと決行。4/26am5:00前、普段寝坊でもこういう時には起きられる。ただしTANUKIに起こしてもらってだが…。目覚まし代わりに洗濯機をまわしながらパソコンで交通情報と気象情報をチェック。起こしてくれたはずのTANUKIはテレビとパソコンに囲まれてまだ半睡状態。
こちらはコーヒーで目覚め、TANUKIは朝からレトルトカレーをかけた大盛りご飯。私は夕べのTANUKIのおみやげの穴子寿司を2つもつまんだら、目覚めていないお腹は一杯になってしまった。朝食に食べる予定だったパンは持っていく事に。
雨の中でとりあえずTANUKIが車の汚れを落とし、荷を積み込んでam6:30自宅スタート。
R150を清水方面に行くと通称イチゴロード沿いの海は、「ついさっきまで台風2号だったんだ」とばかり荒い波が打ち寄せている。しかし道は渋滞もなく順調。am7:00過ぎにはR52に入った。茶摘みの始まらないお茶の緑、八重桜、木々の新緑、藤の花、つつじの花、目に楽しいドライブとなった。1時間後には相又ドライブインでトイレ休憩。ついでに持って来たパンも食べてエネルギー補給。
そして山梨県南アルプス市内で車もガソリン補給。am10:00頃には韮崎ICから中央高速へ。北上するにつれて春の気配は浅くなっていく。天気は時々日が射すかと思うと雨が落ちてくる。諏訪湖あたりは桜が見頃。岡谷JCTから長野道へ入る。
高速を下りる前に梓川SAでトイレ休息。天気も回復して山々の雪が日を受けて光る。ただし風がきつい。ほどなくして豊科IC。豊科ICからR147に出て、穂高神社の看板を追いかける。そこまでは無事だったが、その近くにあるはずの碌山美術館を探して、住宅街の道をウロウロする。大糸線の線路際にようやく写真で見た可愛らしい建物発見。駐車場に車を入れる。まだam11:00前。
荻原碌山はこの地に生まれた彫刻家である。30歳で夭折したがその作品と高村光太郎ら親交のあった人々の作品が3つの雰囲気の違った建物に展示されている。敷地自体はそう広くないが、木立の中に管理棟や売店も含めて上手く配置してあるので、森の中のような雰囲気がある。
入った時にはちょうど大学のゼミか何かの若い人の団体が、碌山の作品が展示されている教会風の建物で講師の解説を聞いていた。
そしてこの旅、ここでまず猫に出会った。橋本平八のきちんと座った猫A、石井鶴三の威嚇するように背中を丸めて立つ猫の2つの彫刻である。もちろん記念の絵ハガキを買った。一廻りしたらすでに昼前、ちょっと距離があるがお馴染の池田の道の駅へ。ハーブ類と全国の池田町Goodsを置いている売店も楽しいが、売店内の軽食、隣りのラーメン屋さん風定食屋、道の向かいの蕎麦屋と1箇所で悩む事ができるし、道の駅なので駐車場も広い。結局TANUKIが道を渡るのを億劫がって定食屋へ。TANUKIはホタテフライ丼とラーメンのセット、私は味噌カツ定食。食べ応えがある。
ここから真直ぐ東へ進めばこれから訪問する風の頁のお仲間かつ農大の先輩のストーブ屋さんの住まう生坂村なのだが、とりあえず地図通りにR19の大木戸の交差点まで戻る。スカイ公園というのが近いらしいのでその案内を追って行く。途中からしっかりと山道、せっせと狭い道を対向車が来ない事を祈りつつ登っていくと案内図に書いてあった赤地蔵さんが辻に立っていた。この半端な十字路をどっちに行ったものやら…。結局TANUKIが電話で聞いてみる事に。次の目標は三叉路の道祖神。藁細工などが飾られてしっかりとお祭りされているようだった。そこから程無くして入り口でストーブ屋さんと次の仕事の下調べに来ていたStrixさんが待っていてくれた。Strixさんも風の頁の仲間で農大の大後輩のカメラマンである。我々はお二人のどちらとも初対面、共通話題は農大・風さんあたりである。とは言っても、ストーブ屋さんとStrixさんで親子ほどの年齢差がある。話はもっぱらストーブ屋さん。寮でだいぶヤンチャな学生生活をされたらしい。我々の頃まではさほど世田谷キャンパスの建付けは替わっていないので、なかなか臨場感あふれるお話だった。
Strixさんは話を聞きながら地形図のチェックに余念が無い。我々がのんきにお昼を食べていた頃、一帯を2人で廻ってきたようだ。「長年住んでいるけど初めて行った所もあったよ」とストーブ屋さんが仰る。
話は定年退職後のアマチュアカメラマンの話題に。「良いカメラ持っているよね」「撮影ポイントにカメラをズラーーッと並べて機械自慢してるもの」などなど…。
先にStrixさんが腰をあげた後、隣家の畑の上の公園に連れて行ってもらった。まだ桜が見頃。「明日は花見だな」という場所は公園化の予算が付いて水道の他にテーブルや椅子まで付いてしまったが、「こんなもの邪魔だよな」と。
薮の中にはタラの芽、身軽に柵を乗り越えて「持って行くか」とホイホイと取ってくれた。しかし、地元の人は木が成長する分を残すが、他所から山菜取りに入った人が全部取ってしまうために最近は少なくなったそうだ。
道の反対側の斜面は農地改良事業で重機が入っている。大きな石をふるっている最中だそうだが、この土地をこれからどう活用しようかというのも高齢化した地区の重要問題らしい。お宅の方へ戻ると、どこからともなくネコのカウッキー君もお帰り。ロシアンブルーの精悍な子だ。もっと大柄なネコかと思っていたが細っそりとしている。「何しろ広いテリトリーを走りまわっているから。」その上、見ている間にも鳥にねらいをつけ、虫を追いかけ、ちっともじっとしていない。でも愛想の好いネコで呼ぶと尻尾を上げてやってくる。
「私(僕か?)も居るよ!」と鳴く犬ともTANUKIがご挨拶。それぞれ写真を撮り、ストーブ屋さんの仕事場も見せていただいて下山。すっかり長居をしてしまった。さて、本日最後の目的地、地ビールレストラン安曇野へ。R19を南下して豊科ICを横断する形で堀金村へ向う。途中で道の駅ほりがねをチェック。広いが色々な施設の駐車場を兼ねているようだ。その1つが青果市場。これでは夜中から慌しそうなので、ここで泊まる事は止めにした。すでに夕暮れ時で売店も閉まっているので、リンゴ畑の中の道をひたすら先へ進む。
地ビールと言うが元々はワイン蔵で、道路から道を下って入って行くとまずワイナリーショップがある。ビールの方はレストランの中に製造ラインが組み込まれて見えるようになっている。いささか時間が早かったので先客は1組。
さっそくTANUKIはオリジナルのビールをズラリとグラスで注文して味比べ。しかし、まだ車を走らせなければならないこちらは、水を飲み飲み食事だけ。地元の野菜たっぷりピザはマッシュポテトが重めだが、食事のつもりなら大変結構。豚のビール煮のソースも美味しかった。
さすがに自分だけ飲んだ後ろめたさでTANUKIがおみやげビールを買い求めているうちに、お客さんも立てこんできた。お腹が一杯になったところで再度北上。ストーブ屋さん・Strixさんお薦めの安曇野松川の道の駅へ。片側は土手沿いの道路、片側は住宅地で駐車スペースがいくつもに区切られている。先客もたくさん居るが静かである。トイレの側に場所を確保して宿泊準備。シートを倒し、シュラフを広げ、遮光カーテンを窓に張り巡らせれば出来上がり。おみやげビールを飲むまでもなくコテッと眠ってしまった。
am5:30起床。寝過ごした…。道の駅では前代未聞。気を取り直して車内を片付け、水を探す。どうやら外水道(水飲み場・手洗い場など)は無いらしく、トイレの水も手を出すと反応する最新型。お湯を沸かすのはいささか大変そうなので、自動販売機のうどんで済ませる。
気が付けばam6:30。すぐ脇の川沿いの道を大町方面へ、薬師の湯を目指す。立派な道だし直線道路、皆かなりのスピードを出している。ともかく近くまで来た。しかし、曲がるはずの所を通り過ぎ、その先から曲がりこんで村の中に迷い込んでしまった。ようやく多分この道だろうという道と交差する所へ。ここでTANUKIと私の意見が180度違った。TANUKI説から検証。みごとに別荘地に迷い込んだ。元来た道に戻って反対方向へ。すぐ側に見慣れた看板が。ともかくこれで朝風呂には入れる!
30分後には風呂場の掃除だそうだが、「大丈夫ですよ」と言われて浴場へ。この時間ではお客さんもまばら。のんびりと身体を洗い露天風呂へ。お湯は熱めだが空気がさわやかで新緑が目に優しい。ゆっくりと暖まって出たら、TANUKIが「朝、顔を洗った時にタオルを出して忘れた」とびしょ濡れのスポーツタオルを所在なげに持っていた。どうやらそれで体を洗ったらしい。さっぱりしたところで本日の第1目的地の鷹狩山へ。山岳博物館を目指して大町市を西から東へと横切っていく。博物館そのものは前にも来た事があるので、前を通り過ぎてそのまま登っていく。車とはいえつま先上がりの道、オートマ車ではあるが3と2のシフトを切り替えながら登っていく。ともかく第2駐車場へ。「当然第1駐車場もあるよね」とそちらへ向う。どちらにしても頂上直下。最後は坂道を歩かなくてはならない。
Strixさんお薦めの早朝から遅れる事2時間位か…。am8:20頂上着。先客の青年がちょうど写真を撮り終えたのか三脚をかついで引き上げて行くのとすれちがった。他は誰もいない。目の前には北アルプスの山々。眼下に町と水の入った田が日の光に輝いて見える。まるで山々にそっと抱えられているようだ。
頂上には展望台の他にレストランが2軒。その一方はインドレストランらしい。当然道は繋がっているので進入禁止を無視して上まで車で上がってくる人も居る。賑やかになりだしたところで頂上を散策。中央に古い金毘羅さんの祠がある。お祭りされているのかどうか定かでないほどに荒れていたが、側に銅像の立派な神馬が置かれていた。初代は江戸時代の終わりに奉納されたそうだが、太平洋戦争時に供出され、昭和55年に作り直されたものだそうだ。
さて、駐車場まで戻ったTANUKIが「腹減ったーー。」水以外の食料はあるのだが、水が無くては全て始まらないものばかり。すぐ上のキャンプ場の炊事場に行ってみたが、まだ水道の栓は締められたままだった。諦めて次は大熊美術館へ。実は私は展示内容よりも喫茶部のチーズケーキを楽しみにしていたのだが…。R147を南下していく。今朝出発した松川の道の駅を通り越して、穂高町有明の別荘地の中、開けた明るい庭に2棟の瀟洒な建物が建っている。一方がcafe安曇野文庫、もう一方がロイヤルコペンハーゲンのお皿などを中心にコレクションしている大熊美術館である。
まずはcafeでお八つ。レアチーズケーキとコーヒー。TANUKIはレアチーズケーキと紅茶。店内の壁には細密な植物画がかかっている。TANUKIは入り口のストーブに目を止める。何しろ昨日はストーブ屋さんでいくつものストーブを見てきたのだから。こちらのは外国製の側面にレリーフ模様のついたもの。その隣りにはドッシリとした本箱。
ホッと一息ついた後、今度は美術館の方へ。入り口でチケット代わりの絵皿の絵ハガキをもらった後、扉を開けて奥へ入るとがらりと世界が変わる。暗い照明の中に青で描かれた絵皿がずらりと並べられている。その年の年号が入ったクリスマスの絵皿。子供用のかわいい柄。母の日のための動物の親子の絵。どれもその年・その時だけの柄のものである。
もちろん猫の絵につい目が行ってしまう。1970年のクリスマスローズと一緒に描かれている猫が素敵で絵ハガキを買ってきた。親子の縞猫も可愛かったのだが、残念ながら絵葉書は無かった。
奥の部屋は趣が変わって植物画のティーセットやディナー皿。白磁に鮮やかな色がきらめく。デンマーク王家からロシアのエカテリーナ2世女王にプレゼントするために下絵の細密な植物画(『フローラ・ダニカ』という全18巻3500種を集めた植物図鑑)から始まって、ディナーセットとして作られる予定だったようだが、途中でエカテリーナ女王が亡くなってしまい、デンマークに残されたものらしい。
大熊美術館のご主人はデンマークをキーワードにコレクションを始められたらしく、他にもアンデルセンの初版本やら、東山魁夷の北欧をテーマにしたリトグラフも飾られている。
ここに入れたのは絵葉書で買ってきた絵皿である。「生まれた年のなど記念にいかが」と言われたのだが、ここはやっぱり猫。「ホームページに載せて良いですか?」と聞いたら、「宣伝して下さい、そのお金があれば皆買い付けにまわしちゃうから…」との事だった。
庭には当り前のような顔をしてシラネアオイのピンクの花。そして山桜。素敵な不思議空間だった。時間はお昼前、これから豊科ICに入り岡谷JCTを西へ、松川ICを目指す。
しかし、腹が減っては戦はできぬ、途中の駒ケ岳SAで昼食。タイミング良くこれから食事をしたい人と食事を終った人との入れ替わり時期に当たったので、混雑している割には早かった。頼んだ信濃旅情丼は桜肉のタタキとウナギの蒲焼、やはり名物らしい凍豆腐と竹の子の煎り卵が乗り、真中に栗の甘露煮がポンと乗っていた。それに1口のとろろ蕎麦と味噌汁、野沢菜の漬物。
食べ終わってスタートしてすぐに松川ICである。ちょうど梨の花が満開、リンゴの花はまだなのかもう終ったのか、柔らかい緑の芽が出ていた。果樹園を通り過ぎれば後は松川インター大鹿線の山道である。地元車はすっ飛ばしていくが「40km/hを40km/hで走って何が悪い」とソロリと走らせて行く。昨日までの雨に雪解け水も加わって道路も脇の崖もあちらこちらで水が流れている。窓を開ければさわやかな風。
大鹿村は広い。境界線の『大鹿村へようこそ』から人家のある所まで、延々と山道である。それでも高速を降りて約1時間で村の中心部へ。困った事に本日はガソリンスタンドが休み。もう少し車にはハラペコのまま我慢してもらう事になる。つり天国はここからほど近い高台にある。ただし距離はわずかだが、ストーブ屋さん宅よりももっとすごい坂道を上がらなければならない。車幅分の桑畑の中の地道。しかも手前のお宅が塀をきれいに直していて、こちらへ迷い込んでしまった。戻るのは車1台分後ろといっても大変。さんざん切り替えして落っこちずに道へ戻り、その奥の道をもう一登り。岩魚とヤマメの釣堀、つり天国へ到着。駐車場に居た猟犬の子犬が大歓迎してくれた。
犬の声で奥さんが母屋から顔を出した。一段落をしていたのだろう。さっそく餌をもらってTANUKIがチャレンジ。魚はよくくいつくがTANUKIがせっかちすぎてかからない。自分の分は釣らねばならぬかと私も手を出してみたが餌を持っていかれるばかり。
TANUKIが何とか大きな岩魚を2匹釣り上げ、お刺身と塩焼きにしてもらう。「もう1匹塩焼きが…」と言うと「引っかけで捕りな」と親父さんが言ってくれる。餌ではなく釣り針に魚を引っかけて捕る訳だ。無事これでもう1匹確保。囲炉裏の前に座り込む。親父さんが魚をさばいている下には、白黒の大きなネコがアラを食べにやってきた。「家の猫じゃないんだけどね」と奥さんは言うが、猫の方は「私のテリトリー」とばかりに物怖じもせず食事をし、日向でひとしきり休んだ後は縁の下で寛いでいた。
この釣堀は入場料は無いが魚の目方と料理の手数料を取られる。ここはTANUKIの奢りなのでこちらは左団扇。いや、団扇で火をおこさなければ。
ちょうど3時のお八つ。しかし、烏龍茶で食べるのはもったいない…。もちろんTANUKIは缶ビールで楽しんだ。
この家は猟師もやっている。鹿肉も手に入れ、しかも「今年は安かった」とTANUKIは一山抱えてホクホクしている。さて、ここからR152を南下して行く。国道とはいえ正真正銘の山道。キブシや山つつじの花がそこここで咲いている。途中で途切れるが蛇洞林道が通っている。国道も林道も走る分には違いが分らない。再度R152に出た所がしらびそ高原との分岐点になる。ここまで約30分。一休みする。
さらに30分、上村の道の駅まで下ってきた。ここでトイレ休憩。さらに先に進み、まつり伝承館の側のガソリンスタンドで給油。一山越えると遠山郷である。ここは古い街で道が狭い。街中の道を通り抜けてまた山道へ。そしてR152は青崩れ峠で途切れる。脇のヒョー越え林道へ。兵越峠の茶屋が水が枯れて無くなってしまったのは残念だが、長野と静岡の県境である。林道を出たとたんにタヌキに化かされたような立派な道がほんの少し現れるが、あっという間に通り過ぎてしまう。また戻ったR152を川沿いに小さな集落をいくつも通り過ぎていく。やがて暗くなり、天竜市内の花桃の里道の駅で一休み。膝の屈伸をするとゴキゴキという。肩をまわすとカクカクいう。5時で売店が終了だそうで、道の駅らしからぬ真っ暗だが、トイレはきれいで気持ちが良かった。このあたりからまた、ヒッチハイカーが…。フロントガラスになにやら虫が止まっている。
この先県道を使って東へ、ほぼ天竜浜名湖鉄道と並走する進路を取る。途中の喫茶店やさい畑で夕飯のスパゲッティを食べたのは8時頃。ヒッチハイカーはここで降りたようだ。掛川からR1に入り、家に着いたのはpm9:45だった。さすがにこの日の行程はきつかった。(03/4/26〜27)